『蟲師(5)』(漆原友紀)

(講談社)[★★★★★] ASIN:4063143619
蟲師 (5)  (アフタヌーンKC)

作中の時間の流れがゆるやかであることに改めて気がつく。

物語は、どれも主人公というか案内役ギンコが不思議なことに遭遇する事から始まり、どの物語も最後は「そして、その後……」という流れで終わる。

どうしようもなかった衝突が少しずつ時間とともにほどけていったり、失って二度とぬぐえないと確信に近く思えたものが緩む。その時間の流れの贅沢さは随一。

冒頭で書かれる、「もいちど 私を生んでおくれ また会いたいのだ また この美しい海を 見たいのだ」に象徴されるように、これは世界賛歌の物語だ。

僕は、日々に追われて「忙しい」を繰り返すうちに、「もう一度この世界を見たい」と思わなくなっている気がする。それはとても緩やかな死への心の準備なのだろうか?

でも、それは理屈。ホントは、もっといろいろなものに、出会いつづけたい。すこし時間がかかるとしても。